酒の飲み方





宴会である。中途採用された隊士の歓迎会と称して真選組は皆酒をあおり料理とつまみを食い散らかしている。当の新人は既に慣れない雰囲気に酔いつぶれたのか、部屋の隅で寝転がっている。ようは皆飲み騒ぐ理由がほしいだけである。
部屋を見回す。自然と目線が上座に向かう。こんな日も職業病なのか、どこか冷静な頭で観察する。
土方は酒は好きだが酒の飲み方は下手だ。酒のほうが彼より一枚上手である。彼はしばしば酒に飲まれる。あれならば年端もいかぬ沖田のほうがいくぶん酒を飲みこなしている。近藤は酒に利用されている。もう少しただしい値段を支払うべきだ。あの人が金を払っているのはお酒に対してでは無いのだろうが。
そういう当の山崎自身は酒は特に好きでも嫌いでもなかった。飲めないというわけではない。いくら飲んでも酔えないのだ。同じ金を使うのならば和菓子の老舗である福々堂で一個450円する美味しいあんぱんをたらふく食べたほうがまだましだ。

今日も彼らは酒を飲む。なにかを忘れるためか、忘れないためか、夢中になって酒を飲むのである。





2014/10/19

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